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私たち研究グループの研究・Research of our group
副毛様体神経節の発見
眼窩(眼球が入る骨のくぼみ)には毛様体神経節と呼ばれる神経細胞集団があります。対光反射、遠近調節反射、近見瞳孔反射(=輻輳反射:近くのものを見るときに瞳孔を収縮させて焦点をはっきりと合わせる反射)の中枢は中脳の動眼神経副核(EW核)にあり、EW核を起始した副交感神経節前神経軸索は動眼神経を経由して眼窩内の毛様体神経節に至り、ここでシナプスを形成します。次に、毛様体神経節で中継された節後神経軸索は眼球内に進入し、毛様体筋を調節して遠近調節を行い、また瞳孔括約筋を収縮させて対光反射と近見瞳孔反射を行います。毛様体神経節は、これら3つの自律神経反射調節に関係しています。ところが、古くから眼窩内に出血を起こした患者の一部に、「対光反射と遠近調節反射が障害されているにもかかわらず近見瞳孔反射が正常な症例」が報告されていました。もし毛様体神経節が3つの作用をすべて司っているなら、この症例の発症メカニズムは説明できません。
そこで私たち研究グループは、「毛様体神経節以外にも内眼筋運動を中継する神経細胞集団が存在するのではないか」と推察しました。私たち研究グループは、食用または毛皮用などに使用された動物の頭(タヌキ、テン、ブタ、ヒツジ、ウマ、キツネ、ネコ、ウサギ、ニホンザル、カニクイザル)を食肉業者や猟友会などから譲り受け、眼窩内の神経を徹底的に比較解剖し、調査を行いました。(新しい解剖学的構造を証明するには、1種類の動物だけでは不十分で 多くの動物種で共通であることを証明する必要があります。)その結果、霊長類を除く調査したすべての哺乳動物において毛様体神経節の他に一つまたは複数の神経節が眼窩内に存在することが判明しました。私たち研究グループはこの神経節群を副毛様体神経節と命名しました(Anatomy and Embryology, vol. 180: 199-205, 1989)。(後の研究で明らかになったことですが、霊長類では眼球内に神経節細胞(眼球内神経節)が多数存在します。)
動眼神経伸展標本の実体顕微鏡写真(アセチルコリンエステラーゼ染色全載標本:ネコ)
自律神経の節後成分が黒茶色に染色されている(染色)。副毛様体神経節は内眼筋へ投射する短毛様体神経の主枝上に存在する。副毛様体神経節には三叉神経からの交通枝(毛様体神経を迂回する副交感性線維が含まれる)が合流する。