鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 形態科学(旧 神経解剖学)
口岩 聡 Satoshi KUCHIIWA Ph.D.
鹿児島純心大学 大学院人間科学研究科・人間教育学部 教育・心理学科
口岩 俊子 Toshiko KUCHIIWA Ph.D.

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私たち研究グループの研究・Research of our group

脳の局所血流調節を司る細胞

 大脳皮質には機能の局在(感覚中枢や言語中枢など脳の部位によって機能が異なること)があり、活動している中枢に集中的に血液が供給される仕組み(局所血流調節機序)があります。私たち研究グループが論文を発表した当時、一酸化窒素が血管の平滑筋を弛緩させる作用をもつことが分かっておりました。それとは別に 脳にも一酸化窒素合成細胞が存在することが分かっていましたが、大脳皮質の局所血流調節のメカニズムは謎でした。私たち研究グループは、一酸化窒素が大脳の局所血流に関係する可能性を考えました。そして、「もし一酸化窒素合成酵素をもつ細胞が大脳の血流調節に関係するなら、一酸化窒素合成細胞は大脳の機能局在には関係なく 大脳皮質全体に均等に分布するだろう」と考え、脳に存在する一酸化窒素合成細胞の分布を調査しました。予想は的中し、一酸化窒素合成酵素を持つ細胞は大脳皮質の機能とは無関係に均一に新皮質中に分布していていることが判明しました(Neuroreport, vol. 5: 1662-1664, 1994)。しかも、大脳新皮質が発達した高等動物(ネコ、サル)では一酸化窒素細胞は密に存在し、発達が悪い動物(ラット)では分布が疎であること、さらに同一動物でも新皮質(より進化した皮質)の方が旧皮質よりも細胞密度が高いことが判明しました。この解剖学的知見だけで脳の局所的血流が一酸化窒素合成細胞によって調節されているとは断定できませんが、この研究が引き金の一つとなり 多くの研究が行われ、現在では脳の局所血流に一酸化窒素が関係していることは確実視されています。

大脳皮質一酸化窒素合成細胞の顕微鏡写真

大脳皮質一酸化窒素合成細胞の顕微鏡写真(NADPH-diaphorase 染色)

 一酸化窒素合成細胞を黒染した標本。上半分の暗青色領域が大脳皮質。一酸化窒素合成酵素に満たされた突起が大脳皮質に密に分布し、全体として青色を呈している。下半分の明るい部分が大脳髄質である。一酸化窒素合成細胞は、皮質と髄質の境界領域に特に密に分布する。血管が青く濃染されていることに注意(赤矢印)。血管壁に一酸化窒素合成酵素を含む突起が密に分布していることを明示している。

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