鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 形態科学(旧 神経解剖学)
口岩 聡 Satoshi KUCHIIWA Ph.D.
鹿児島純心大学 大学院人間科学研究科・人間教育学部 教育・心理学科
口岩 俊子 Toshiko KUCHIIWA Ph.D.

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私たち研究グループの研究・Research of our group

ダイオキシンによる前脳の異常

 ダイオキシン類の環境放出は著しく減少しましたが、ダイオキシン類は化学的に難分解性ですので、環境中ではほとんど分解されることはなく、現在でも環境中(海底の泥の中)に残存しています(「今も続くダイオキシン汚染」の項を参照してください)。

 ダイオキシン類は毒性の高い環境汚染物質です。実験動物とヒトにおいて、ダイオキシン類が身体に広範囲の影響(たとえば成長、生殖、免疫、内分泌の障害)を及ぼすことが知られています。ダイオキシンを実験動物に投与すると、進行性の体重減少、体温下降、運動抑制などの症状が出ます。このような現象が起こることについての病理学的メカニズムは分かっていませんが、中枢神経系の異常に起因する現象であることは容易に推察できます。しかし、私たちの研究発表当時、中枢神経系がダイオキシンによって障害されることを示した明瞭な形態学的証拠は示されていませんでした。ダイオキシンそのものの脳への浸透性は低いと考えられますが、視床下部では比較的高い濃度のダイオキシンが検出されますので、ダイオキシンが中枢神経系に対して直接的毒性をもつ可能性が考えられます。

 私たち研究グループは、c-Fos蛋白の発現を免疫組織化学的に調査することにより、ダイオキシンの中枢毒性の作用部位を調査しました(c-Fos蛋白は神経活動のマーカーで、中枢神経系の機能的活性部位の解剖学的マッピングに使用されます)。実験動物にダイオキシンを投与して3日後、c-Fos蛋白免疫陽性細胞は、視床下部(背内側核、室傍核、内側視索前核)、扁桃体中心核、分界条床核に多数観察されました。この結果から、ダイオキシンが中枢神経系に直接的に毒性を及ぼす事が推察されました(Brain Research, vol. 931: p.176-180, 2002。)

扁桃体中心核および分界条床核におけるc-Fos蛋白発現を示す顕微鏡写真

扁桃体中心核(A、B)および分界条床核(C、D)におけるc-Fos蛋白発現を示す顕微鏡写真

 AとCはダイオキシン投与群、BとDは対照群。対照群に比較すると、ダイオキシン投与群では、両核において著しいc-Fos発現が見られる。CAN、扁桃体中心核; BST、分界条床核。スケールバーは50μm。(Brain Research, vol. 931: p.176-180, 2002から引用)

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